令和3年度 文化芸術による子供育成総合事業 -巡回公演事業-

イメージの中で⾃由に遊ぶ ⾝体表現の魅⼒

Haruka M. (公認心理師)

学校公演のカタルシス効果

「コロナで出かけることができず、ざんねんと思っていたのですが、みなさんのおかげで たいくつな⽇々がふきとびました」「ぼくたち 6 年⽣は新型コロナウィルスのせいで⾏事 などがせばまってしまいました。ですが、今⽇みなさんのおどりや劇をみて、思い出に残 りました。そして歌の歌詞「あしたがあるさ」に勇気づけられ前を向いて⼈⽣をあゆもう と思いました」「コロナで楽しい活動が中⽌や延期になっていたので、本当に楽しかった です」

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令和3年度ナチュラルダンステアトル/の学校公演を観た、子供の感想。

以下青字も子供の感想から抜粋したものです。​​

 学校公演後の⼦供たちの感想には、コロナ禍で⾝も⼼も窮屈な思いをしていたところ、 学校公演によって、気持ちが解放されたり、前向きになったりしたことがあちこちに綴ら れています。

 ― 学校公演には、うずくまっていた気持ちをほどく、「カタルシス」効果が あるのではないか。 

 カタルシスは、ギリシア語で「浄化」の意味であり、抑圧された感情や葛藤などを、別の⾏動で代理的に発散させることにより、⼼の緊張をとく⽅法、とされています。

 何かに 感動したり、表現したり、感情表現を代理的に体験したりすることで、カタルシスは⽣じ やすいとされています。 

 感想⽂を紐解いてみると、ワクワク、ドキドキ、という⾔葉が散りばめられており、

「実際に⾒ている時に少し涙⽬になる時が 2〜3 回ありました」

「本当に⽝の気持ちが痛 いほど分かり、泣きました」

「座って⾒ているだけだったけど、迫⼒がすごくて同じ世界 にいるような感じがしました」

 と感情移⼊や疑似体験が⾒受けられ、「感動」という⾔葉 にもたくさん出会います。⼦供たちは、まさに、カタルシスを⽣じさせるような内的体験 をしていたことが窺われます。

「迫⼒」という⾔葉も多く書かれており、⼦供たちはイメ ージの中で、迫⼒のあるダンスを疑似体験することで、コロナ禍での活動制限によって⼼ ⾝ともに縮こまっていた気持ちを解放していたことが推察されます。 

 なお、⼩学⽣から中学⽣にかけて⾔語や思考の発達段階による違いはあるものの、皆共通して、⼼を動かされるような内的体験をしていたことも印象的でした。

 これは、⾔葉を 使わないダンスだからこそ、発達段階によらず伝え合えるということの証左でもあると考えられます。⾔葉に捉われず、イメージの中で⾃由に遊べるのも、⾝体表現の魅⼒と⾔えるでしょう。 

 

 ⼤⼈よりも悩みを⾔葉にする⼒が⼗分備わっておらず、⾏動⼒も経済⼒も限られている ⼦供たちは、どこに発散したらよいのかわからない思いを閉じ込めやすいと考えられます。

 学校公演は、今ひとつしっくりこない⼼をそれとなく開放し、すっとなだめてくれる、そ んな作⽤を持っているのではないかと思われます。

 ⾔葉に疲れた⼤⼈たちも、「カタルシス」をおひとつ、いかがでしょうか。 

(参考⽂献) 

中島 義明 ⼦安 増⽣ 繁桝 算男 箱⽥ 裕司 安藤 清志 1999 ⼼理学辞典,有斐閣

松浦 元貴 2015 スポーツ観戦によるカタルシス効果 ⾼知⼯科⼤学,1-7.

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